犬糸状虫症(フィラリア症)の概要

犬糸状虫(フィラリア)という寄生虫が、右心室(心臓の右の部屋)から肺動脈(心臓から肺に血液を送り出す血管)に寄生する病気です。犬糸状虫は成虫になると体長15cmから30cmになるそうめん状の寄生虫です。こんな寄生虫が心臓から肺にかけて寄生するので、肺の血管や右心系はダメージをうけることになります。

院長先生が開業した1980年頃はフィラリア症の症例がかなりの件数来院したそうで、頚静脈から長い鉗子を挿入して心臓に寄生した糸状虫を摘出するという手術がよく行われたそうです。現在では効果的な予防薬の登場や、予防意識向上によりフィラリアに感染した症例はあまり経験することがありません。しかし、フィラリアがいなくなった訳ではありません。しっかりと予防を行う必要があります。


犬糸状虫(フィラリア)の生活環

フィラリアの生活環(要はフィラリアの一生です)を知ると、予防の要点が理解できます。

動物用医薬品メーカーのサイトにわかりやすい解説が掲載されています。

ノミダニフィラリア.com


犬糸状虫症(フィラリア症)の予防

予防薬のタイプ

組織内に侵入した幼虫を駆虫する薬剤を使用して予防します。予防薬の剤形としては月に一回内服させる錠剤タイプ、月に一回食べさせるチュアブルタイプ、月に一回皮膚に滴下するスポットタイプ、1年間効果が持続する注射剤があります。上記のサイトで紹介されているのは月に一回食べさせるチュアブルタイプになります。

予防はいつから、いつまで?

フィラリア症の予防期間は、フィラリア感染開始の1ヶ月後から感染終了の1ヶ月後までとされています。

では、フィラリアの感染開始および感染終了はどうやって判断すればよいのかというと...。

蚊の活動で判断する場合

フィラリアは蚊が媒介する寄生虫なので、蚊の活動時期がフィラリアの予防時期と判断する方法です。犬の体組織中に進入したフィラリアの幼虫はしばらくの間、組織中で成長してから血管に侵入し血流に乗って心臓に向かいます。しばらく組織の中で成長するという期間にフィラリアの幼虫を殺虫して予防することになりますので、フィラリア症の予防期間は、蚊がではじめて一ヶ月後から、蚊がいなくなって一ヶ月後まで行うのが安全とされています。

HDUによる予防期間の設定

フィラリアの幼虫は蚊の体内でしばらく成長してから犬に感染する状態になります。蚊の体内でフィラリアの幼虫が成長するためにはある程度の気温が必要です。この性質を利用して、予防期間は何月何日から何月何日までかを推測する方法があります。平均気温のデータからフィラリアの感染期間を算出推定するというものでHDU(Heartworm Development heat Unit)と呼ばれています。日本糸状虫症研究会、犬フィラリア症予防普及会が紹介している方法です。1日の平均気温からHDUの値を算出して、これを毎日毎日加算していきます。HDUの合計が130に到達した日を感染開始日とし、30日間のHDU合計が130を下回った日を感染終了日とします。予防期間は、感染開始の1ヶ月後から感染終了の1ヶ月後までとなります。


HDUによる山梨県甲府市のフィラリア予防期間

過去の気象データに基づく山梨県甲府市のフィラリア予防期間

2008年はフィラリア感染期間が5月19日から10月26日まで。よって2008年山梨県甲府市のフィラリア予防期間は6月24日から11月21日が推奨されるということになります。

2009年はフィラリア感染期間が5月18日から10月26日まで。よって2009年山梨県甲府市フィラリア予防期間は6月21日から11月23日ということになります。

上記の年はいずれも予防期間は6月中頃から11月末の6ヶ月間であり、多くの年で類似した結果になっています。

しかし、過去にはもう少し長くなった年もあります。1998年の気象データによると、フィラリア感染期間は4月30日から11月4日までとなり、この年、甲府市のフィラリア予防期間は5月末から12月初めまでだったことになります。

予防期間はその年の気象条件によって左右されますが、過去の傾向をから考えると山梨県甲府市であればフィラリア予防期間は6月初めから12月初めまでの7ヶ月間と考えておけば安全でしょう。

2023年の気象データに基づく山梨県甲府市のフィラリア予防終了日

2023年は9月30日から10月29日までの累積HDUが128.35となりましたので、予防期間は例年通り11月末もしくは12月初めまでとなります。